【終了】 セックスワーク・サミット2012@歌舞伎町・弐



 
開催日時:2012年11月25日(日) 13時30分〜17時00分  ●参加者: 
35

 テーマ:風俗嬢の「社会復帰」は可能か? 〜風俗嬢の「社会復帰支援」の可能性を考える〜

 

 「セックスワークの社会化」を議論するイベント「セックスワーク・サミット2012」、
 新宿歌舞伎町での第2回目の開催は、セックスワーカーの「社会復帰」をテーマとして取り上げました。

 セックスワークの問題系を考える上で、必ず出てくるのが、
 「劣悪な労働環境で働かされている風俗嬢の救済」もしくは、彼女達の「社会復帰」というテーマです。

 前回・5月のサミットでも、「3.0の世界のビジョン云々を語る前に、2.0の世界で苦しんでいる女性の救済、
 社会復帰を優先するべきではないか」という意見が、数多く出されました。

 通俗的なイメージとして、性風俗の世界に従事する女性の大半は、様々な事情で、
 家庭や学校といった「表社会」からはじき出された結果、他に生きていくための選択肢が無いがゆえに、
 セックスワークという「裏社会」に入り、悲惨かつ劣悪な労働環境の下で、
 「自らの身体の切り売り」という、継続性と将来性の乏しい働き方をしている、と考えられています。
 そこから、「風俗嬢を救済せよ」「社会復帰させよ」という、おなじみの救済論が出てくることになります。

 しかし、こうした救済論的発想、及びそのベースになっている現状認識は、本当に正しいのでしょうか。
 そもそも、当事者自身は、社会復帰を望んでいるのでしょうか。
 「反社会という名の社会」に安住した方が、居心地が良い、と考えているのではないでしょうか。

 社会に絶望した人間、自ら社会を見限った人間に対して、「社会に復帰せよ」と主張することに、
 どれだけの意味があるのでしょうか。
 そもそも、私たちが生きている社会は、彼女たちにとって、「復帰するに値する社会」なのでしょうか?

 性風俗や売買春が、社会から疎外された女性のための、(不安定かつ刹那的なものではあるが)
 精神的・経済的な「救済システム」になっている、という側面は否めません。

 「風俗嬢を社会復帰させよ」と語るのであれば、私たちの社会は、この「救済システム」を超える、
 オルタナティヴなシステムを用意しなければなりませんが、果たして、それは可能なのでしょうか?だとすれば、どのように?

 今回のサミットでは、夜の世界で働く女性を支援する団体の代表者の方々をお招きして、
 支援現場のリアル、課題と展望を語って頂きました。

 そして、そこから、風俗嬢の「社会復帰」の可否(できるか否か)と是非(すべきか否か)、
 そして、私たちが向かうべき、セックスワーク「3.0」の世界
 =「セックスワークの社会化」を実現するためのヒントを考えました。

 ⇒サミットの開催風景・議論の一部は、シノドスジャーナルでも、紹介されています。


 お招きしたゲストの紹介

●中山美里(なかやま・みさと)さん

 ガールズケア代表、(株)オフィスキング取締役。

 http://www.girlscare.org/


 ライターとして風俗嬢やAV女優などと接するうちに、案外大事なことを知らないで
 性業界で働いている人が多いんだなと感じるようになり、
 セックスワーカーのための情報サイト「ガールズケア」を立ち上げる。

 情報はSTD、お仕事について(ベテラン風俗嬢に聞いたテクなど)、
 恋愛、引退後の転職事情など。

 また、情報提供だけでなく、セックスワーカーが困りがちな、
 不動産の紹介や優しいお医者さんなどを紹介している。

 現在は手弁当での運営なので、どうせだったら楽しくやろうと、
 現役の風俗嬢などにコラムを書いてもらったりしながら運営中。

★中山美里さんの著作

     

★中山さんのインタビュー記事はこちら http://alternas.jp/work/ethical_work/15195


●角間惇一郎(かくま・じゅんいちろう)さん

 一般社団法人Grow As People 代表理事。

 http://growaspeople.org/

 1983年新潟県生まれ。

 大学中退後、昼間デザイン事務所で働きながら、建築専門学校に通う。

 専門学校卒業後、ゼネコン、設計事務所等での勤務を経験。

 働きながら埼玉県越谷市を拠点としたまちづくりNPOまちたみ設立・運営し、
 地域のコミュニティを活性化するイベントや大学生のきっかけ支援を行う。

 10年まちたみの活動を通じ、「立場を知られる事を恐れ、相談や支援を受けられない女性達」の
 存在を知り、仕事を辞め、対象者へのインタビュー活動を開始。

 12年(社)GrowAsPeople設立。現在は「夜の世界で働く女性達」の就職・起業支援、
 住宅支援等を行い、女性の自立支援と課題の顕在化を目指して活動中。

★角間さんのインタビュー記事はこちら http://monju.in/special/19/


 当日のサミット開催風景


 ◆開場

  

 会場は、新宿区歌舞伎町。参加者の皆様には、新潟名物・南蛮海老煎餅をお配りいたしました。


 ◆開始〜主催者挨拶(一般社団法人ホワイトハンズ代表・坂爪真吾)

 

 会場は、満員御礼!凄い熱気です。

 

 今回のサミットも、セックスワーカー当事者、研究者、大学教員、特別支援学校の教員、
 シングルマザー当事者、新聞記者、テレビ局、NPO関係者、児童福祉施設関係者、
 ライター、大学院生、大学生など、幅広い分野の方々にご参加頂きました。

 

 冒頭の挨拶では、ホワイトハンズ代表の坂爪が、セックスワークの問題系をめぐる議論における
 「当事者の不在」と「代弁者の偏在」問題について、語りました。


 ◆第1部:ゲスト発表@:ガールズケア(中山美里さん)

 

 最初のゲスト発表は、ガールズケア代表の中山美里さん。
 約20年、この業界に携わっているご経験をふまえて、風俗嬢を取り巻く現状、立ち上げのきっかけ、
 本当に必要な支援の在り方について、非常に示唆に富む、大変貴重なお話をして頂きました。

 

 健康保険証を持っていない(そもそも、健康保険の存在すら知らない)女性、
 銀行口座を持っていない(そもそも、銀行が何をするところなのか知らない)女性、
 そういった女性を支援することの大変さ、多岐にわたる行政手続きの煩雑さなどをお話し頂きました。

<ガールズケアのこれから>

 身分証明の無い風俗嬢の住む場所を確保するための不動産会社との連携、
 性病の予防・治療のための医療機関との協働、活動を外部にPRするためのネット以外での
 公開講座、一般企業との連携など、これからの活動の展望をお話しして頂きました。

<ガールズケア・スタッフのお話>

 途中、ガールズケアでライター、コラム執筆の活動をしている風俗嬢経験者の女性の方々にも登壇して頂き、
 ご自身の経験を踏まえて、風俗嬢の社会復帰支援の問題をはじめ、
 昼職を見つけるために必要な資質、稼げる風俗嬢と稼げない風俗嬢の違いなど、具体的な事例をお話しして頂きました。

<セックスワークと障害者の問題>

 性風俗の仕事に従事する女性の中での、知的障害者・発達障害者・精神障害者の占める割合の話、
 AVの撮影現場の最下層で、知的障害の女性が、使い捨てのように扱われている現状など、
 障害者福祉の面から見て、極めて深刻かつ重要な事例を提示して下さりました。


 ◆第1部:ゲスト発表A:一般社団法人Grow As People(代表理事・角間惇一郎さん)

 

 引き続き、一般社団法人Grow As People(GAP)代表理事・角間惇一郎さんの発表。

 現在、夜の世界(性風俗)で働く女性は、推定29万人以上。女性100人に2人の割合。
 生まれながらの理由から、生きていく上で、大きなリスクを選択せざるを得ない。

 しかし、その結果、自分の立場をあかして、誰かに相談することができなくなってしまった
 女性達を支えていくための方法を、分かりやすく&ユーモアを交えながら、発表して頂きました。

 

 GAPが独自に集めた、「夜の世界で働く女性」の統計データ(580人分)を提示。
 中卒者、不登校経験者、DV被害経験者、ひとり親家庭、年金未払い者の割合が
 昼の世界で働く女性と比較して、非常に高いことが伺えます。

 

 夜の世界で働く女性がぶつかるのは、
「40歳の壁」

 一般的に、40歳を超えて、夜の世界で働き続けるのは、非常に困難。
 そのため、この壁にぶつかる前に、何らかの形で、昼の世界の仕事、生き方を見つける必要がある。
 だが、実際に40歳間際になってからでは、もう手遅れ=対応のしようがない場合が多い。

 そこで、
多くの女性が、このまま夜の世界で働き続けることに危機感を覚え始める
 25歳から34歳までの間を軸として、何らかの形で支援を行っていこう
、というのが、GAPの立場。

 

 夜の世界で働く女性たちが、「次」へのステップを踏み出しにくい理由を、図解で解説。
 立場を分かってくれる女性による相談支援、浪費的なお金の使い方から、投資的な使い方への転換、
 「自分の好きなことを知る機会」の提供の必要性を、述べて頂きました。

 

 最も大切なポイントの一つは、
 
「夜の世界で働く女性は、自分たちのことを『弱者』『救済すべき対象』として見られたくない!!」という点。

 風俗嬢=「弱者」「救済すべき対象」である、という前提で行われる支援活動は、
 風俗嬢たちの反感や敬遠を招くため、まずうまく行かない。

 

 「ではどうするべきか」というと、「福祉」や「救済」といった、上から目線のスタンスではない、
 女性がまず気軽に集まりやすい「楽しい」「かわいい」居場所、仕組みをつくる必要がある。
 それが、
「Crejo(くれじょ)」プロジェクト

 しんどい人生経験と、かわいい感性をもった女の子の視点が、より良い社会つくりに
 ”ちょこっと”貢献するプロジェクトです。

 

 「Crejo」プロジェクトでは、不動産オフィス(クラブや事務所)の空間デザインを、
 夜の世界で働いていた女性たちが、女性ならではの感性やアイデアを活かして、
 カジュアルに、「かわいく」生まれ変わらせる、というもの。

 デザインという「かわいい」「楽しい」世界を持ち込むことによって、女性が集まりやすい、
 仕事で他者の役に立つ喜び、実感を得られやすい場をつくる。

 

 
<「福祉」ではなく、「かわいい」>

 夜の世界で働く女性への支援で大切なことは、「ゴールを決める」ことではない。
 「資格を取得する」「就職する」という「福祉的なゴール」を、こちら側で勝手に設定してしまうと、
 そもそも、女性が集まってくれない。

 そうではなく、「かわいい」というカジュアルなキーワードを入り口にして、
 まずは多様性のある場、これまで接することの無かった多くの人や生き方と
 接することのできる場を提供することで、本人が自発的に、これから生きていく上での
 目的や仕事を見つけていけるように、間接的に支援する。

 女性を、
「支援する相手」ではなく、「自分の身内」としてとらえる感覚が大切。

 

 最終的には、
「受益者を支援者に変える」=GAPの活動に関わることで、これからの目標や仕事、
 居場所を見つけることのできた女性が、今度は支援者側に回るような仕組みをつくっていきたい。


 ◆第2部:ゲストへの、主催者・司会からの質問(約30分)

 

 第2部では、主宰者のホワイトハンズ代表・坂爪と、司会の赤谷より、ゲストの方々に質問をさせて頂きました。

 

 司会の赤谷、本日も絶好調です!ゲストの方々に、忌憚のない質問を連発。

 

 性風俗に関わる問題を扱う組織がNPO法人格を取得する上での問題、
 これから活動を全国展開していくための手法、ネット以外でのPR方法、
 社会的な偏見や無理解を打破する方法など、質問は多岐にわたりました。

 

 皆さん、真剣な表情で、ゲストの方々のお話を、メモにとっていらっしゃいました。


 ◆第3部:ゲストと会場との質疑応答・討論(約60分)

 

 第3部は、会場の参加者から寄せられた質問に、ゲストの方々が回答しました。

 中山さんに対しては、性産業と知的・発達障害者の関係や、業界のディープな裏話に関する質問が集中。
 ただ「当事者の多様性」を訴えるだけでは、問題は解決できないのでは、という意見も。

 

 角間さんには、支援対象者の限定性の是非を問う質問が多く寄せられました。

 目の前にいる相手と向き合っていくことが自身の原点、モチベーションである、ということ、
 そして、しんどさや生き辛さを抱えていることを、「恥ずかしいこと」「マイナス」と考えるのではなく、
 (誰もが、何らかの形で、「しんどさ」や「生き辛さ」を抱えているのだから)
 他人や社会とつながるための「きっかけ」「武器」にするべき、と主張する角間さん。

 

 店舗型の女性ではなく、無店舗型の女性に調査対象を絞った理由は?
 男性のセックスワーカーに対する社会復帰支援は?
 支援者側の生活はどうするの?そもそも、「食える事業」として成り立つの?など、核心を着いた質問も。

 60分間、会場からの質問は、途切れることがありませんでした。


◆司会・主催者挨拶〜終了

 振り返ってみれば、あっという間の3時間半でした。

 非常に多くの論点、気づきが生成されたサミットだったので、
 参加者の方々の中には、許容量オーバーで未消化になってしまった部分もあったかと思います。
 ぜひ、この場限りではなく、これからも、この問題を考え続けて頂けると嬉しいです!

 今回のサミットが、「風俗嬢の社会復帰支援」に関する問題系を、より深く考えるきっかけになれば幸いです。

 支援の現場に携わっているお立場から、大変貴重なお話をお聞かせくださったゲストの中山さんと角間さん、
 多くのご意見・ご質問をお寄せくださった参加者の皆様、本当にありがとうございました!

 ⇒サミットの開催風景・議論の一部は、シノドスジャーナルでも、紹介されています。



 参加者の感想

 

 ⇒「買う側の論理」=男性側の問題点も、今後取り上げていきたいです。

 

 ⇒当事者が集まれる空間の生成、そして、当事者が集まりやすいような形に、
  業態や業界の在り方を変えていくことは、今後、議論していく価値があるテーマだと思います。

 

 ⇒今回は、まず「風俗嬢の社会復帰支援」という問題、視点そのものを、現場の立場から
  批判的に検討&再解釈する、ということがメインの議題になったのかな、と思います。

 

 ⇒連携以前の問題として、行政が、そもそも性風俗の問題を認識したがらない、関わりたがらない、という難点もあります。

 

 ⇒今回のサミットが、良いきっかけになれば幸いです。

 

 ⇒角間さんのお話にもありましたが、風俗嬢の社会復帰支援に関しては、
 「展望やビジョンを明確に打ち出すことで、逆に人が集まらなくなってしまう」
 「あえて曖昧なままにした方が、現実的に成果を上げやすい」という側面があると思います。
  もちろん、明確なビジョンを出し、数値目標を追求する形の活動は、また別途必要だと思います。

 

 ⇒性産業の底辺で働く障害者の問題は、障害の問題だけでなく、家庭環境やDV・虐待、貧困の問題も
  絡んでくるので、一筋縄ではいかないと思います。まず、「そういう事実がある」ということを、世間に認知させる活動が大切になるはず。

 

 ⇒一体、誰が、風俗嬢を「弱者」「救済対象」とみなしたがっているのか。その背景には、何があるのか。
  ぜひ、この問題を、大学で皆様と考えて頂けると幸いです。

 

 ⇒横のつながりは、今後、サミットでも意識して構築していきたいと考えております。

 

 ⇒男性客、経営者側の問題、実は質問や事例を用意してきたのですが、時間が無く、割愛してしまいました。
  次回以降、テーマとして取り上げていきたいと思います。

 

 ⇒まさに、おっしゃる通りだと思います!
 

 ⇒「40歳の壁」、これは風俗嬢だけの問題ではない、というのは、確かに真実ですね。

 

 ⇒本日のサミットが、良いインスパイアの材料になれば幸いです。

 

 ⇒そういう意味で、「風俗嬢の社会復帰問題」、長年の歴史と蓄積のある問題だと思います。


 

 サミット終了後の懇親会@歌舞伎町には、11名の方々が参加してくださりました。
 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!


 ⇒サミットの開催風景・議論の一部は、シノドスジャーナルでも、紹介されています。

 
  ⇒今回のサミットの内容を完全収録しております!ぜひチェックしてください。


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